【式と証明】「実数の2乗は0以上」の使い方
「実数の2乗は0以上」の使い方
式の証明で「実数の2乗は0以上」がうまく使えません。
a,bは実数として,a^2−ab+b^2≧0の証明で,(実数)^2≧0だから,a^2≧0,b^2≧0ですよね?
−abはどうなるのですか?
進研ゼミからの回答!
こんにちは。
いただいた質問について,さっそく回答いたします。
【質問の確認】
式の証明で「実数の2乗は0以上」がうまく使えません。
a,bは実数として,a2−ab+b2≧0の証明で,(実数)2≧0だから,a2≧0,b2≧0ですよね?
−abはどうなるのですか?
というご質問ですね。
【解説】
≪実数の2乗の使い方≫
不等式の証明方法の手順として,(実数)2≧0を用いることがあります。ある式Aに対し,
A=(実数)2
A=(実数)2+……+(実数)2
と式変形できれば,A≧0を証明することができます。
さて,a,bを実数とすると,(実数)2≧0だから,もちろんa2≧0,b2≧0ですが,
式全体で,(実数)2や(実数)2+(正の数)や(実数)2+(実数)2などの形をつくる
のが一般的です。
それでは,実際に,a2−ab+b2について考えてみましょう。
まず,(実数)2をつくるために,次のような変形を考えてみます。
a2-ab+b2=(a2-2ab+b2)+ab
=(a-b)2+ab
+abになりましたから,(a−b)2+ab ≧0としたい気もしますが,ちょっと待ってください!
a,b,は実数ですが,0なのか正の数か負の数かはわかりません。したがって,ab≧0 とは限らないので,a2−ab+b2≧0の証明にはならないのです。
a2−ab+b2は式全体を(実数)2の形に変形できないので,この不等式の証明では,ほかの形をつくることが目標になります。
≪(実数)2の形のつくり方≫
(実数)2の形をつくる,と聞いて思い出すことはありませんか?
2次関数のときに用いた式変形である平方完成で,( )2の形にしましたね。実は,この式変形の手順は,2次関数だけでなく,そのほかの場面でも使うことがあります。まず平方完成を思い出しましょう。
平方完成の手順
STEP 1 x2の項とxの項をx2の係数でくくる。
STEP 2 くくった中身に着目し,( )2の形をつくる。
STEP 3 全体の計算をする。
この手順より,a2−ab+b2を平方完成してみましょう。
ただし,a2−ab+b2は文字がa,bの2つありますから,1つの文字に着目して考えます。今回は,全体をaの2次式と見て平方完成しましょう。
これで平方完成ができました!
最後の★の式から,a,bは実数より, , ,つまり,(実数)2+(実数)2の形ができました。
これより, と言えるのです。
なお,この場合,等号成立条件は かつ ,すなわち, かつ b=0なので a = b = 0 となります。
最後に,以上のことをまとめておきます。
2次式が0以上になることを証明する場合は,
平方完成を用いて,式全体で,(実数)2や (実数)2+(実数)2などの形をつくることを考える。
【アドバイス】
2次式が0以上であることを証明するときの式変形は,因数分解の公式を使ってうまくいくこともありますが,基本になるのは平方完成です。いろいろな式で練習し,平方完成を利用して,(実数)2の形がつくれるようにしておきましょう。
それでは,これで回答を終わります。
これからも,『進研ゼミ高校講座』にしっかりと取り組んでいってくださいね。
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