【タンパク質合成と遺伝子発現】DNAとRNAを構成する糖や塩基が違うのはなぜですか?
DNAとRNAを構成する糖や塩基が違うのはなぜですか?
DNAとRNAで相違点があることはわかりました。では,糖と塩基がDNAとRNAで共通してないことの利点はなんですか?
進研ゼミからの回答!
いただいた質問について,さっそく回答します。
【質問の確認】
【問題】
次の文章と表は,RNAについて述べたものである。空欄に適当な語句を記せ。
RNAは,DNAと同じく,構成単位が鎖状につながってできているが,通常の状態の細胞内では,DNAは(① )本の鎖が(② )構造をつくって存在しているのに対し, RNAは(③ )本の鎖で存在している。RNAの構成単位も(④ )であるが,DNAの構成単位とは少し違う。その違いをまとめると次の表のようになる。
【解答】
① 2 ② 二重らせん ③ 1 ④ ヌクレオチド ⑤ ウラシル ⑥ チミン ⑦ リボース ⑧ デオキシリボース
この問題でDNAとRNAの違いは整理できたけれども,そもそもなぜDNAとRNAを構成する糖と塩基が異なるのか,そのメリットを知りたい。
というご質問ですね。
【解説】
はじめに,DNAとRNAで異なる糖を使う利点を説明します。
DNAとRNAの構成単位はいずれもヌクレオチドですが, DNAとRNAの役割は以下のように大きく異なります。
DNA:遺伝情報を長期間保存するために使われる
RNA:遺伝情報を一時的に利用するために使われる
遺伝情報を保存するDNAは安定的な性質が必要と考えられます。
一方,RNAは必要なときにすばやく合成することができ,不要になったらただちに分解できるような反応性に富んだ性質が都合がよいと言えます。
したがってDNAとRNAはそれぞれの役割に適するように,化学的な構造が異なっているのです。
DNAを構成するデオキシリボースにより,DNAは二重らせん構造をとりやすくなり,安定した構造になることができます。
一方,RNAを構成するリボースにはこのような性質はありません。
このように,糖の種類が異なることで,DNAに比べて,1本鎖であるRNAの方が化学的に不安定な構造をとり,反応性に富んだ性質をもっています。
次に,DNAとRNAで異なる塩基を使う利点を説明します。
DNAは遺伝情報を確実に保存する必要がありますが,DNAの塩基は,自然にほかのものに変化してしまうことがあり,4つの塩基のうち,CがUに置き換わるという現象は,比較的,高頻度に起こります。
そのような場合,変化した塩基を修復するはたらきをもつ酵素がこれを直しています。
もしDNAの塩基にUが用いられていたら,もともとUなのか,Cが変化したUなのか,見分けることができません。
DNAではTを用いることにより,Uがあれば,Cが変化したものであると見分けることができるので,修復する酵素が正しくCに戻すことができます。
このように,置き換わった塩基を見分けやすくするために,DNAでは,Cからの変化が起きやすいUではなく, Tを使っていると考えられています。
一方,TはUをもとにつくられているので,合成と分解が頻繁なRNAではUを用いる方がエネルギー的に有利ということが言えます。
【アドバイス】
回答をまとめると,以下のようになります。
DNAとRNAの糖が異なる利点
:それぞれの目的に応じた化学的な性質(安定か不安定かの違い)を生み出す
DNAとRNAの塩基が異なる利点
:C→Uという置換が起こりやすいため,DNAではTを用い,RNAではエネルギー的に有利なUを用いる。
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