2015年度出題傾向分析

2015年度出題傾向分析倫理

倫理

難易度が大幅に難化、細かい知識と判断が必要: ２０１５年度の倫理の出題は、２０１４年度と同じ大問４題、解答数３７の構成であった。
全体的な傾向としては、教科書範囲の知識を問う問題を中心に、思想家の思想や用語の意味・内容の正確な理解、論理的思考力を求める問題が出題された。一部に、教科書では大きく扱われていない細かい事項や、思想の深い理解を問う問題もみられた。また、長文の選択肢をすべて読み解いて正誤を判断することを求められる問題もあり、全体として文章量が増加した。

出題分野は、２０１４年度と同じく青年期、現代の諸課題、源流思想、日本思想、西洋思想の各分野から出題された。

出題形式は、リード文中の下線に関連した内容について選択肢の正誤を問う問題が中心。文章資料の内容の読解問題が４問、統計資料の読み取り問題が１問、３行以上の文章選択肢が含まれる問題が１４問あり、すべての選択肢が５行にわたるものもみられた。
また、組み合わせ問題が１２問と全体の約３分の１出題された。そのうち７問は８択で、さらに７問のうち３問がすべての選択肢について、正誤を判断する問題で、より細かい知識と判断が求められた。

２０１５年度の平均点は、５３．３９点で、２０１４年度の６０．８７点より大幅に難化した。

2015年度の出題

大問番号	出題内容	配点
1	正義と理想（青年期，現代の諸課題，西洋思想）	28
2	言葉の限界について（源流思想）	24
3	困難を乗り越える学び（日本思想）	24
4	理性に対する評価の変遷（西洋思想）	24
	Total	100

試験時間60分平均点：53.39点

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まず人物とキーワードを押さえる！
現代の諸課題は社会的関心の度合いもカギ

〔第１問〕は、小学校卒業時のタイムカプセルを，10 年後に開ける２人の友人の会話文をもとに、青年期、現代の諸課題、西洋思想、分野融合問題などが出題された。
問３は、ジェームズ、ユング、エリクソンが取り上げられた。「役割実験」はやや細かい内容で、ここまで学習が及んでいない受験生も多かっただろう。
問４はショーペンハウアー、スペンサー、ヴォルテールについての３つの選択肢のそれぞれの正誤を判断する問題。選択肢の中の「世界史を『自由の意識の進歩』と捉え」はヘーゲル，「階級闘争による歴史の必然的進歩」「革命」はマルクスの内容と判断できたかどうかがポイント。

問７は統計資料の読み取り問題で、３つの選択肢がすべて７行にわたるうえ、グラフの分析の仕方への判断が求められ、解答に時間がかかったと思われる。
〔第１問〕で毎年出題されている、現代の諸課題については、社会の動きや問題点に関心を持っておけばどのようなテーマ設定の問題が出題されても有利といえる。

源流思想はキーワードだけでなく
主要な思想家や宗教の確実な理解が必要

〔第２問〕は、「言葉の限界」をテーマとして、源流思想の主要な思想家や宗教について基本事項を中心に、網羅的に問われた。問５はユダヤ教、キリスト教、イスラームの聖典について３つの選択肢の正誤を判断する問題。それぞれの教義について正確な理解と詳細な知識が求められ、受験生の負担が大きかったと思われる。近年、すべての選択肢について、正誤を判断する問題が出題されているので、注意しておきたい。

問７はプラトンの『パイドロス』の読解問題。資料文が長いが、丁寧に読み解けば解答できる。資料文の読み取り問題は、選択肢も含めて文章を早く正確に読む力が必要となるので、過去問等を利用して慣れておくことが大切である。

学習が及びにくい日本思想は、
細かい分野まで理解しておきたい！

〔第３問〕は、「困難を乗り越える学び」をテーマとして、古代から近代に至る日本思想について網羅的に問われた。問３は親鸞、道元、日蓮について３つの選択肢の正誤を判断する問題。それぞれの思想のキーワードについて、内容の正確な理解が求められた。

問５は近世の文芸や思想において他者に対する関わり方を示した人物についての問題。近松門左衛門や井原西鶴、山本常朝など、倫理の教科書ではそれほど扱いが大きくない人物について、正しく理解できているかが問われた。
日本思想では、細かい知識・理解が問われることも多いので、教科書の脚注や資料集にも注意深く目を配り、細部までまんべんなく学習しておくことが重要である。

西洋思想は
重要思想の意味・内容理解の定着を！

〔第４問〕は、「西洋近代思想における理性に対する評価の変遷」をテーマに、近現代の西洋思想について問われた。問４はコントについての問題。コントまでは学習が及んでいなかったとしても、他の選択肢がそれぞれデューイ、サルトル、ヘーゲルの内容と判断しやすいため、消去法での解答も可能であった。
問６はカントの批判哲学についての問題。「感性」と「悟性」の判断に迷った受験生が多かったと思われる。代表的な思想家については、細かい所まで深く問われることもあるので、資料集や用語集で知識を補い、理解を深めておくことが大切である。また、現代の思想家に関する出題は毎年のようにみられる。高得点を狙うには、教科書の本文では扱いが大きくない思想家についても知識を補っておきたい。

項目	2013	2014	2015
項目	本試
カントとヘーゲル	○	○	○
マルクスと社会主義	○	○	○
実存主義の思想	○	○	○
プラグマティズムの思想	○	○	○
現代のヒューマニズムと生命倫理		○	○
現代の思想	○	○	○
日本の風土と社会
日本古来の思想と宗教観	○	○	○
鎌倉より前の日本仏教	○	○	○
鎌倉仏教			○
日本の儒学の思想	○	○	○
国学の思想		○	○
江戸時代の洋学・民衆の思想	○	○	○
明治の思想	○	○	○
大正・昭和の思想	○	○	○
地球と人類社会		○
国際平和の確立と人類の福祉		○	○

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センター試験出題分野一覧

項目	2013	2014	2015
項目	本試
人間性の特質と文化	○	○	○
青年期と適応	○	○	○
ソクラテス以前のギリシャ思想		○
ソクラテス		○
プラトン・アリストテレスの思想	○	○	○
ヘレニズムの思想	○	○
キリスト教の思想	○	○	○
イスラーム	○	○	○
ブッダと仏教思想	○	○	○
儒家の思想	○	○	○
老荘の思想	○	○	○
科学技術の発達
情報化	○
核家族と高齢化	○		○
国際化		○
ルネサンスと宗教改革	○	○	○
合理論と経験論	○	○	○
社会契約の思想	○	○	○
功利主義	○		○

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項目	2013	2014	2015
項目	本試
人間性の特質と文化	○	○	○
青年期と適応	○	○	○
ソクラテス以前のギリシャ思想		○
ソクラテス		○
プラトン・アリストテレスの思想	○	○	○
ヘレニズムの思想	○	○
キリスト教の思想	○	○	○
イスラーム	○	○	○
ブッダと仏教思想	○	○	○
儒家の思想	○	○	○
老荘の思想	○	○	○
科学技術の発達
情報化	○
核家族と高齢化	○		○
国際化		○
ルネサンスと宗教改革	○	○	○
合理論と経験論	○	○	○
社会契約の思想	○	○	○
功利主義	○		○
カントとヘーゲル	○	○	○
マルクスと社会主義	○	○	○
実存主義の思想	○	○	○
プラグマティズムの思想	○	○	○
現代のヒューマニズムと生命倫理		○	○
現代の思想	○	○	○
日本の風土と社会
日本古来の思想と宗教観	○	○	○
鎌倉より前の日本仏教	○	○	○
鎌倉仏教			○
日本の儒学の思想	○	○	○
国学の思想		○	○
江戸時代の洋学・民衆の思想	○	○	○
明治の思想	○	○	○
大正・昭和の思想	○	○	○
地球と人類社会		○
国際平和の確立と人類の福祉		○	○

この問題で差がついた!

〔第２問〕＜問2（12）：荘子の「道」＞
荘子の「道」について、理解できているかどうかで差がついた。荘子は、万物が「道」にしたがい、ありのままに生きるのが世界の本来のすがたであり、そこでは、すべてが斉しく同じである（万物斉同）とした。
つまり、あるべき世界は差別や対立がなく、すべてが斉しいということである。選択肢③の「差別がなく万物が等しい境地」から、荘子の思想と判断できたかどうかがポイント。代表的な思想家や教科書の太字レベルの語句については、単なる人物と用語の暗記ではなく、自分自身のことばで説明できる程度にまで十分理解しておくことが重要である。

〔第３問〕＜問1（20）：古代日本の人々の心＞
古代日本人の倫理観と賀茂真淵の思想について問われた。古代日本人が重んじたのが清き明き心（清明心）であり、賀茂真淵が『万葉集』の古歌に素朴で素直な「高く直き心」を見出したことがおさえられているかどうかで差がついた。教科書の基本的な内容は確実におさえ、得点できるようにしておきたい。

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