『読書の旅に出かけよう』で、読書について語ってくださった作家・朝井リョウさん。実は、冊子のインタビュー記事では披露しきれなかった素敵な話がいっぱいあったので、ここでもたっぷりご紹介します!
作家 朝井リョウ
1989年、岐阜生まれ。大学在学中に『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。2013年には『何者』が直木賞に輝き、戦後最年少の受賞者として大注目を浴びる。
『ままならないから私とあなた』
(文藝春秋/1400円+税)発売中
Q.中学時代は、どんな本を読みましたか?
話題の本をあれこれと!
小学生のときから好きだった森絵都さんやはやみねかおるさんに加えて、話題の本を読むことが多かったです。なかでも覚えているのは、吉田修一さん、辻仁成さん、直木賞をダブル受賞した村山由佳さんと石田衣良さん…。さくらももこさんのエッセイもすごく好きで、何十回と読みました!一人の作家を追って読むというよりは、手あたり次第に本を手に取って自分の好みを見極めていた時期だったと思います。
Q.本はいつ読んでいたのですか?
お風呂やトイレでも読んでいました(笑)
中学では授業やテニス部での練習を頑張っていたので、本は家で読んでいました。勉強の合間に机で読むこともあったけれど、ぼくは基本的に、両手が空いていると「この時間に他に何かできるはず」と思っちゃうタイプ。だから、トイレに入っているときとか、お風呂に入っているときにも、決まって本を手にしていることが多かったですね。そしてときどき、湯船の中に本を落とすっていう…(笑)。
Q.そもそもなぜ小説を書くようになったのですか?
先生にほめられたのがきっかけです。
小学6年生のときに、担任の先生に日記を「日記というより、小説を読んでるみたいで楽しい」と言われたことが大きいと思います。そこから本格的に書き始めたわけですが、当時は「すごいね」「おもしろいね」なんて言われたくて書いていた感じ。だから勝手に学級新聞をつくって連載小説を載せたりもしたし、中学生のときには、夏休みの自由研究として小説を書くのが定番に。冬頃からコツコツと書き出して、原稿用紙500枚にもおよぶ長編小説を提出したこともありました。
Q.発売中の『ままならないから私とあなた』のことを詳しく教えてください。
テーマは「老害vs.新人類」です。
スマートフォンの新しい機能でも何でも、世の中に新しいものが登場したときに、まずは否定する人と、取り入れてみるタイプの人がいますよね。多分いわゆる老害と呼ばれる人は後者で、新人類と言われる人は前者。どっちの立場の言い分も、正しいときもあれば間違っているときもある。いま26歳の自分は、老害と新人類に片方ずつ足を突っ込んでいるような状態なので(笑)、今の自分の考えを文章に残しておくという意味でも書いておきたかった作品です。自分が最先端の人間ではなくなっていくことはまだ想像できないかもしれませんが、ぜひ読んでいただいて、何かしら感じてもらえたらうれしいです。
Q.最後に、ズバリ! 大好きな1冊は?
佐藤多佳子さんの『一瞬の風になれ』です。
高校生の時に読んで、「一生好きだ!」と思った本です。高校の陸上部の話なのですが、走るシーンに引き込まれるだけでなく、物語のしめくくりの言葉も圧倒的。作家になった今となっては、登場人物をみごとに書き分けているところに驚愕させられたりもして、尊敬が止まらない作品です。人生のふとしたときに思い出す言葉がたくさん詰まっているんですよね。ぼくもいつか、こんなふうにだれかの一生を照らせるような本を書きたいと思っています。